労働問題
残業代 | (労働者から)残業代を請求したい! |
労働災害 | (労働者から)勤務時間中にケガをした! |
解雇 | (使用者から)あの労働者を解雇させることはできる? |
派遣切り | 派遣会社からもう来なくても良いと言われた! |
交通事故/自賠責&通勤災害 | 通勤中に交通事故に遭った! |
パートタイマーの有給休暇 | パートも有休をとれる? |
退職の意思表示 | いつでも退職できる? |
残業代
(労働者から)残業代を請求したい!
(労働者から)私は毎日長時間にわたり残業をしていますが、会社からは「従業員が残業をするのは当然だ」「お前との間で残業代を支払うと約束したことはない」と言われ、残業代を全く支払ってもらっていません。確かに、私が会社に残業代の支払いを約束してもらったことはありません。私が会社に対して残業代の支払いを請求することはできますか。
残業代を請求することはできます。但し、2年で時効により消滅してしまうので、ご注意ください。
1 残業代について
労働基準法32条は、労働者の労働時間について、週40時間または1日8時間を超えて労働させてはならないと定めています。但し、例外的に使用者が労働者の代表者などとの間で協定(いわゆるサブロク協定)を締結した場合(労働基準法36条)などに残業(時間外労働)をすることを認めていますが、その場合も、使用者は労働者に対して、残業代(時間外手当、割増賃金)(1.25倍の率で計算したもの)を支払わなければなりません(労働基準法37条)。
なお、上記のとおり、残業代(時間外手当)の割増率は1.25倍が基本ですが、深夜労働(午後10時から午前5時までの労働)や休日労働の場合もそれぞれ定められた割増率を乗じた割増賃金を支払わなければなりません。
また、まれにサブロク協定すら締結せず、残業をさせている場合があります。この使用者の処置は違法ですが(労働基準法32条違反として罰則を受けることになります(労働基準法119条1号))、使用者が労働者に対して残業代を支払わなければならないことに変わりはありません。
2 消滅時効
なお、労働者の使用者に対する賃金の権利(賃金債権)は2年で時効により消滅します(労働基準法115条)ので、注意が必要です。
3 使用者が残業代を支払わなかったら
使用者が残業代を支払わなければ、6か月以上の懲役または30万円以下の罰金に処せられます(労働基準法119条1号)。事例は少ないですが、実際に有罪判決まで至ったものもあります(参照・大阪地裁平成12年8月9日判決(判例時報1732号152頁))。
また、たとえ労働者・使用者間で残業代を支払わないことを合意していたとしても、その合意は無効であり、割増賃金を支払わない使用者は処罰されます。
労働災害
(労働者から)勤務時間中にケガをした!
(労働者から)私は工場に勤務しています。先日、工場長の指示どおり機械を操作していたところ、指を切断する事故を起こしました。しかし、会社は「事故はお前の不注意だ」と言って、私のケガについて何の補償もしてくれません。私は何の補償も受けられませんか。
なお、聞くところによると工場長の指示は労働安全の関係法令に違反していたそうです。
労災保険から治療費等の給付を受けたり、労災病院等で治療を受けたりできます。また、事案によっては、労災保険からの給付にとどまらず、あなたが会社に対して、損害賠償請求をすることができる場合もあります。
1 労災保険からの給付について
(1) 労働災害保険について
労働者が業務中にケガや病気などの災害に遭うことを労働災害(労災)と言います。
労働災害が起きた場合、あくまでも使用者・労働者間の話であり、本来なら、国家がその補償をする必要はないはずです。しかし、労働災害は企業活動にともなって必然的に発生するものであることは間違いありませんし、また、労働災害の場面でも弱い立場にある労働者を保護する必要性も高いです。
そこで、労働者災害補償保険法(労災保険法)が定められています。労災保険は政府が管掌し、労働者の業務上の災害や通勤災害に対して必要な保険給付が行われることになっています。
(2) 労働災害とは
労災保険法上、労働災害には以下の2つがあります。
① 業務災害(業務上の負傷、疾病、障害又は死亡)
② 通勤災害(通勤上の負傷、疾病、障害又は死亡)
あなたの事故が上記①または②に該当すれば、労災保険により給付を受けることができます。
上記①②に該当するためには条件があり、たとえば①業務災害に該当すると認められるためには、労働者が事業主の支配下にあり(業務遂行性)、業務と関係がある中でケガなどをしたこと(業務起因性)が必要です。
(3) 労災保険の給付の内容について
労働災害と認められれば、労災保険から治療や治療費等について給付を受けることができます。所定の給付請求書を労働基準監督署に提出しましょう(なお、労災病院・労災保険指定病院で治療を受ける場合は病院の窓口を経由して労働基準監督署に請求書を提出します)。
制度の詳細・書式は(財)労災保険情報センターのホームページにも載っています。
2 会社に対する損害賠償請求について
上記のとおり、労働災害については労災保険から給付を受けることができます。
但し、従業員が受けた損害の中には労災保険から支払われないものもあります(慰謝料等)。そこで、もし労働者の受けた損害が使用者の過失(安全配慮義務違反等)により生じたものである場合、さらに勤務先に対し損害賠償請求することできます。
この点、あなたの事故は工場長の指示が誤って生じたもののようですから、勤務先に対し損害賠償請求することができるでしょう。
3 もし不明な点があれば、一人で抱え込まず弁護士等専門家に相談しましょう。
解雇
(使用者から)あの労働者を解雇させることはできる?
(使用者から)当社の正社員であるAは配属された部署で的確に業務遂行ができず、人事考課においても下位10%未満の順位で、当社の戦力になっていません。
当社の就業規則には「勤務成績が不要で就業に適しないと認められたときには解雇できる」という規定があります。Aを解雇することはできるでしょうか?
結局、ケースバイケースであり判断は難しいですが、解雇が認められるハードルは高いことは念頭に置く必要があります。
1 解雇について
使用者は解雇をする権利を有していますが、解雇権を濫用することは許されません。労働契約法16条は、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」は、解雇は濫用したものとして無効であると定めています。
2 能力不足を理由とする解雇
能力不足を理由とする解雇が認められるかどうかはケースバイケースであり、判断が難しいです。
この点、東京地裁平成11年10月15日決定(セガ・エンタープライゼズ事件)は、ご質問のケースに似た事例で、解雇を無効と判断しています。つまり、会社の「労働能率が劣り、向上の見込みがないと認めたとき」に解雇できる、という就業規則の規定について、労働者の能力が平均的な水準に達していない場合に解雇できる、という趣旨ではなく、労働者の能力が著しく劣り、しかも向上の見込みがない場合に限って解雇を認める趣旨である、と解釈し、また、人事考課の点についても考課が相対評価に過ぎず、労働者への教育指導を行うことにより、労働者の労働能力の向上を図る余地があるため、解雇は無効であるとしました。
他方、即戦力と期待されて中途採用社員が入社したが、期待に反して全く能力不足だった場合、解雇を有効とした裁判例も存在します(東京地裁平成14年10月22日判決・ヒロセ電機事件)。
3 まとめ
結局、労働者がどのような地位であるのか、どの程度の能力不足なのか等によって判断が異なりうる問題です。具体的には、弁護士にご相談の上、解雇を実施するか、その他の方法(解雇ではなく、労働者の能力に見合った配置転換等)をとるのかを決めるのがよいと思われます。
派遣切り
派遣会社からもう来なくても良いと言われた!
私は派遣会社(派遣元)に登録している派遣労働者です。現在、自動車工場(派遣先)で働いていますが、派遣元との派遣労働契約の契約期間はあと3か月残っています。
先日、派遣会社(派遣元)から「派遣先から『不況で仕事がない。もう派遣労働者は必要ない』と言われた。悪いけど、解雇します」と言われました。この場合、派遣先は私を解雇することができるのでしょうか。
あなたの雇い主は派遣元であり、派遣先があなたを解雇することはできません。また、あなたとの契約期間が残っている以上、派遣元があなたを解雇することも原則としてできません。
1 契約期間中、使用者も労働者も契約を勝手に終わらせることはできません。言い換えれば、契約期間中、使用者が労働者を解雇することはできず、労働者が労働を止めることもできないのが原則です。
2 よって、仮に派遣先と派遣元との間の労働者派遣契約(派遣元が派遣先に労働者を提供する契約)が中途解除されたとしても、派遣元と派遣労働者との派遣労働契約は契約期間中であり依然として存続しています。
したがって、派遣元は派遣労働者を解雇することはできず、派遣労働者に対し次の派遣先を提供する義務があります(なお、解雇に合理的な理由があれば解雇は可能ですが、判例上、合理的理由が認められる条件は厳しくなっています)。
交通事故/自賠責&通勤災害
通勤中に交通事故に遭った!
私は通勤途中、自動車にぶつかって交通事故にあいました。この事故について私はどこからどのような補償を受けることができるでしょうか。
交通事故被害者として、加害者(保険会社)から損害賠償を受けることができます。また、通勤災害に遭った労働者として、労災保険による給付を受けることもできます。
1 あなたは交通事故の被害者ですから、加害者に対し損害賠償請求をすることができます。また、加害者は自賠責保険に入っていますから(強制加入)、加害者に代わり自賠責保険から支払いを受けることができます。また、加害者が任意保険に入っていれば、その保険会社から支払いを受けることもできるでしょう。
2 また、あなたは通勤途中で事故にあったということですから、その事故は通勤災害(労災)ということになり、労災保険による保護を受けることができるでしょう。
但し、通常の通勤経路から逸脱した上で事故に遭ったような場合(例えば、通勤途中でパチンコに行く等)は労災保険の保護が受けられない可能性があります。
3 詳しいことは弁護士へご相談ください。
パートタイマーの有給休暇
パートも有休をとれる?
私はパートタイムで働いていますが、正社員と同じように、有給休暇をとることができますか?
条件を満たせば有給休暇をとることができます。パートだからダメ、ということはありません。
1 パートタイム労働者も有給休暇をとることができますが、日数は一般の労働者とは異なります。
2 例えば、勤続年数が1年6か月の場合、一般労働者は年間11日の有給休暇をとることができます。他方、1週間に3日程度勤務するパートタイム労働者の有給休暇は年間6日になります。
3 有給休暇の日数は、勤続年数に応じて増えていきます。パートタイム労働者の場合、契約期間が途切れずに契約が更新されていれば、最初の契約の時からの勤続年数を基礎に有給休暇の日数を考えるべきでしょう。
退職の意思表示
いつでも退職できる?
私は都合により勤務先を退職したいのですが、いつでも退職できるのでしょうか。
雇用期間に定めがある場合と無い場合とで異なります。また、各職場の就業規則や雇用契約の内容によっても異なる場合があります。
1 あなた(労働者)は勤務先との間で雇用契約を結んでいます。そして、雇用契約には①期間の定めがある場合〔契約上、雇用期間が○年間(○か月)と決まっている場合〕と②期間の定めがない場合があります。
2 ①雇用契約に期間の定めがある場合
当初の契約の際、勤務先も労働者も「○年間雇います・働きます」と約束したのですから、原則としてその期間は雇い・働かなければなりません。よって、期間中の辞職(退職)は、「やむを得ない事由」が必要です(民法628条)。但し、契約の期間の初日から1年経過後は、一定の場合を除き、いつでも退職することができます(労働基準法137条)。
3 ②雇用契約に期間の定めがない場合
この場合、労働者からの辞職(退職)の申し出は自由にすることができます。但し、2週間以上前に退職の予告を通知しなければなりません(民法627条)。
4 なお、各職場の就業規則や雇用契約の内容によっては上記の法律上の規定と異なる場合もありますので、ご確認下さい。